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学校の多職種連携の課題と展望!

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今回も文献紹介で、学校における多職種連携の課題と展望について、

あれこれ考えてみたいと思います。


紹介する論文

小田郁予(2022).学校における多職種連携研究の課題と展望―連携概念の定義と連携研究を捉える視点.東京大学大学院教育学研究科紀要,61,pp.353-364.


* 概念定義が曖昧な「学校における多職種連携」 *

本論の書き出しは、ここから始まっています。まずは曖昧な定義からスタートして、運用していく中で整備していく流れは、良いか悪いかは別として、日本の文化的な特徴だと感じます。台湾のSCシステムとの国際比較でも、役割の明文化に大きな違いがあることが分かりました。


以前の記事で多職種連携についてふれましたが、多職種連携の効果として、子どもの支援だけでなく、教員の業務負担軽減や、医療×教育の橋渡しなど、様々な効果が期待されています。あるいはそれゆえに、定義しにくいのかもしれません。


何というか、連携すればすべての問題は解決すると思っているとしたら、それはだいぶ違う気がします。



* 一見複雑に見えるけど、やっぱり複雑な学校現場 *

連携の定式化が難しいことの要因として、目標の共有が必要だと思いますが、本論では以下のように指摘しています。


しかし一方で難しいのはこの到達目標や役割、責任を明文化し学校における連携を定式化すれば済む、という問題でもない複雑さが学校現場にあることにある。

具体的には、例えば教員側の傾向として、虐待や不登校などの問題について、「教員だけでは解決できない」と捉えている一方で、専門家に全て委ねることへの抵抗感も感じているとのこと。問題を抱えがちな先生方が一定数おられるのも、こうした特徴が影響しているのかもしれません。



* 多職種連携のモデルとしての医療・福祉領域 *

連携が主たる業務のひとつである医療・福祉領域を参考に、以下のようなモデル図が紹介されています。


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縦軸(相互関係性)は、お互いの専門性を生かし合っている状態で、横軸(公式性)連携や活動がいかに認知されているかを表すそうです。右上の「チームワーク」は、組織内の共通目標の下で、協力体制が定着した状態として成立するとのことでした。


たしかに、こうした考え方は、学校現場でも通用すると感じます。実際に連携がしっかりしている学校は、ほぼ毎回のようにコンサルの時間が定式化しているし、どの問題をSCに相談するか、どこまでは学校側で対処するか、連携の時間の確保を含めて、しっかり体制化されています。


連携が整っていない学校ほど、ここがすごく曖昧で、定式化されていません。人手が足りないので無理もないのですが、人手が足りないところこそ、一定の連携モデルに従って行動することが必要な気がします。



* 連携に必要な時間ってどれぐらい? *

ちょっと本論からそれるのですが、話し合いによる連携に必要な時間ってどれぐらいなのかについて、考えてみたいと思います。実践的・介入的な連携もあると思うのですが、その辺りは今回は触れません。


私見としては、以下のような感じがオーソドックスかなと思います。


■連携にかかる時間(合計30分)

情報共有:15分

コンサルテーション10分

共通目標・方針の確認:5分



状況によって、新しい変化がなかったり、時間が確保できないときは、情報共有を短縮して行うこともあります。30分確保できれば、連携は十分だと思います。


扱っている人数が多いほど、このあたりは時間確保が大変になるわけですが、1人辺りの時間数をしっかり割かないと、十分な連携にはならないので、「これぐらい必要」という共通認識をもつことが大事かなと思っています。


個人的には「共通目標」を立てないと、支援の質は上がらないと考えています。共通目標を立てていないSCさんもいるかと思いますが、支援をする上では必須です。本論でも、チームワークを目指していく上で、共通目標の重要性が説かれています。



* 学校における多職種連携! *

本論に戻ります。ここまでの流れは、以下の発言にまとまっています。

つまり,多職種連携には「個々人では対処が困難で対応に限界がある」課題が根底にあり,この課題を起点として達成したい解決の共通認識の下に,それぞれの視点や専門性が活かされ,またその専門性を相互に補完し合いながら課題解決に向けた取り組みが展開される。

1.単独解決できない課題

2.異なる専門性や視点を持つ多様なアクター

3.共有の目的


このあたりがキーワードになるようです。


ケース会議を進める上でも、上記の3点を明らかにしながら、自分はどこまでするのか、どういう役割で今後動くのか、みたいなことが大事になります。とくにSCとしては、「どこに気を付けるべきか、どんな流れで進めるべきか」など見立てて、リスクの高い進め方を回避するための助言が必要になるのではないかと思います。


学校臨床では、進め方が悪いとすぐにどこかとどこかが対立して、修復不能な関係に陥ったりするので、その点はSCが修正できると良いのかなと思ってます。

「SCによって修復不能な関係に陥る場合もある」かもしれませんが…


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* まとめ *

今回は学校における多職種連携について、論文を手掛かりに考えてみました。具体的な役割の境界線は、今後の課題になるのだろうと思います。何が良い連携の形なのか、いろんな形を実践で試しながら、知見を積み上げていくと良いのかなと思います。



* 引用・参考文献 *

小田郁予(2022).学校における多職種連携研究の課題と展望―連携概念の定義と連携研究を捉える視点.東京大学大学院教育学研究科紀要,61,pp.353-364.

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