学校における多職種連携について
- 和-conne代表 佐藤

- 9月20日
- 読了時間: 5分
更新日:10月5日

今回は文献紹介です。学校における多職種連携についてのお話。
文献の主張や言及を踏まえつつ、私見を語っています。
紹介する論文
入江優子(2022).学校における多職種連携の意義―校内の組織開発に着目して, 日本養護教諭教育学会誌, 26(1), 5-10.
* 学校で活動する職種について *
学校には、実に様々な職種の人がいます。
学校医、学校歯科医、学校薬剤師、教諭、養護教諭、栄養教諭、事務職員、SC、SSW、部活動指導員、医療的ケア看護職員、特別支援教育支援員、情報通信技術支援員、教員業務支援員など。
この中でも、学校医などの校長の監督から独立した専門職もいますが、SCやSSWは校長監督下で職務遂行を行っています。実臨床上でも、例えばSCとして紹介状を書いたときには、必ず送付前に管理職の確認をとる必要があります。
論文の中では、SCやSSWは専門性発揮の観点から、教育委員会配置であったり、SV体制が組まれるなど、一定の外部性が保たれていると概説されています。
論文では、お互いの専門性を尊重した連携の在り方について、重要なところを以下の点にまとめています。
そして,専門性協働では実践の過程そのものが協働を作り上げていく場となる(紅林ら,2003)ことを踏まえると,①各専門職の学校の組織体制への位置づけ,②教員と共に課題解決に向かう実践経験の蓄積,これらを通した③他職種間の相互理解が専門的協働を活性化していく重要な要件となると言えるだろう。(p7)
論文では続けて、
本特集の定義に倣い「多職種連携」を「複数の職種が集合体として連携すること」と捉えると,重要な概念として「コーディネーション」 が浮上してくる。
と述べており、コーディネーションが専門性協働を促進させるという方向で論を展開しています。この辺は後半で触れたいと思います。
* 教員間の協働の上に成り立つチーム学校 *
最近、概念として「チーム学校」という考え方が使われています。色んな文章でこの言葉を見かけますが、実際の連携は、学校によって微妙に/あるいはかなり違うと思います。本当にチームになっているところもあれば、チームと言えるほどまとまっていないことも。本論でも指摘されているのが、「教員間の協働」を促す「学校の組織体制」が機能していることが基盤になります。
積み木でいうところの下支えするところが、「教員間の協働」になります。そもそも教員間で対立が起こっているような状況だったり、パワハラ等が起こっている環境だと、教員と他専門職との連携も難しくなります。当然といえば当然。

* 専門職同士の連携も一筋縄ではいかない *
専門職同士の連携も、それもそれで課題があると、本論でも語られています。要は、相手の専門性への理解がないと成立しないことが結構あります。例えば、病気が問題になるとき、診断名は共通言語ですが、まず診断名を知らないと話が通じないですし、そこへの配慮がどの程度の重要性があるのか、予後のリスクがどの程度かなど、認識の差は無数にあります。
現場感覚で言えば、同じ専門職であっても意見が違うことはあるため、ある程度の誤解や認識の差は仕方ない気がします。精神疾患はバイオマーカーがはっきりしないので、確定診断をつけにくいのも大きい気がします。
ただし、認識の差があっても連携が進められるように、お互いの動き方、役割を規定しておく、大前提となる共通認識を作っておくというのが大事な気がします。
* コーディネーションという特効薬! *
学校の組織体制も影響し、意見のすり合わせも一筋縄ではいかなさそうな多職種連携ですが、本論で強調されているのが、コーディネーションです。養護教諭の先生に今後期待される大きなお役割かもしれないなと思っています。まさに多職種連携の特効薬と言えるかもしれません。
下図は論文で紹介されていた、チーム支援の形態図です。概念図としては、かなり分かりやすいと思います。これが実際に機能するように組むというのが、今後の課題と言えるかもしれません。

このように、SCやSSWが働くに当たって、学校とのつなぎ役になるのが、コーディネーターの先生です。この役割を養護教諭の先生が担っている学校は、結構ありそうです。ちなみに地域資源との連携をする上でも、養護教諭の先生の果たす役割は大きいです。養護教諭の先生は基本的に1人職場の中で奮闘されていますし、研修もたくさん受けておられて、わりと心理師と職業スタイルが近い気がします。
現場で働いていると実感しますが、コーディネーターの先生に助けてもらわないと、連携はうまくできません。コーディネーターの先生が、各専門家の専門性をいくらか理解されていると、「この会議にはこの先生がいた方が良いから呼びましょう」と、そういう動きが可能になります。
こういう細かいセッティングや連絡・調整が、効果的な多職種連携に繋がっていくのではないかなと常々思います。
正直なところ、SCをやっていても、例えば校内でいじめ事案が起こったとして、会議に呼ばれなければ、まったく関わらないことは普通にあり得ます。すべての案件にSCが関わる必要もないですが、明らかに入った方がよいケースもあります。ここは本当に、コーディネーターの先生の手腕によるところが大きいと思います。
SCを呼んでも意味がないから呼ばない、と言われないように、SCそのものが問題解決力を高める必要があるという、そういう話でもありますが…。
* まとめ *
今回は校内連携におけるコーディネーションの重要性について考えてみました。
私たちのような心理の専門職は、「心理授業する」「教員研修する」「学校だよりに寄稿する」「難しいケースを引き受ける」「会議で積極的に発言する」など、これらはすべて生徒指導提要で規定されるSCの主要な職務ですが、こういう使い方もできるということを示していくことが大事なんだと思います。
今後、SCを目指す方は、この辺がしっかりできるようになるよう研鑽を積んでいくと良いのではないかなと思います。皆さんも学校における多職種連携について学ぶ際に、本論を手に取ってみられると良いのではないでしょうか。




