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「無理させない」と言われたら:子どもの精神疾患と学校対応

  • 18 時間前
  • 読了時間: 8分

医療機関から「学校では無理をさせないように」と伝えられたとき、学校はどのように対応すればよいのでしょうか。体育は休ませた方がよいのか。行事には参加してよいのか。体調が悪そうなときは、本人に声をかけるべきか、それとも静かに見守るべきか。「無理をさせない」という言葉だけでは、具体的な対応を決めることはできません。


医療機関は診断や治療に関する情報をもっていますが、学校が必要としているのは、「どの場面で困りやすいのか」「どのようなサインが見られるのか」「学校では何をすればよいのか」という、日々の学校生活に結びつく情報です。


身体疾患の場合は具体的な指示がもらえる場合がありますが、精神疾患の場合はどうでしょうか。この記事では、医療情報を学校で実践できる支援へとつなげるために、家庭・学校・医療機関の間で、何を整理すればよいのかを考えたいと思います。




子どもの心の不調は、学校でどう現れるのか


子どもでも、うつ病や不安症、摂食障害などの精神疾患にかかることがあります。また、発達特性や学校生活上の困難を背景として、不安や抑うつなどの症状が現れることもあります。


さまざまな要因から生じる子どもの心の不調ですが、必ずしも「悲しそう」「不安そう」といった、分かりやすい姿で現れるとは限りません。ここが、不調を見逃しやすいポイントの一つです。


イライラや怒りっぽさ、落ち着きのなさが目立つこともあれば、遅刻や欠席、集中力の低下、友人とのトラブル、保健室の利用など、学校生活上の変化として現れることもあります。頭痛や腹痛など、身体の不調を訴える場合もあります。


そのため、周囲からは「意欲がない」「態度が悪い」「反抗的だ」と受け取られてしまうことがあります。


ポイント①:「反抗的」「怠けている」と見える行動の背景に、心の不調が隠れている可能性も考える。


比較的分かりやすい例として、不安が強い子どもは、人前での発表やグループ活動、教室に入ることを避ける場合があります。抑うつが強い子どもには、朝起きられない、考えがまとまらない、以前はできていたことに取り組めないといった変化が見られることがあります。


ただし、こうした変化だけで、精神疾患の有無を判断することはできません。また、診断名が分かっていても、必要な対応がすぐに決まるわけではありません。同じ診断を受けていても、症状の現れ方や負担を感じる場面、必要な支援は一人ひとり異なるからです。


ポイント②:必要な対応を考えるには、診断名だけでなく、その子の状態や生活環境を踏まえた「見立て」が必要


※ここでいう「見立て」とは、診断名だけでなく、本人の状態や生活環境、困っている場面などを踏まえて、何が起きているのかを整理することです。

子どもの心の不調について、教職員に求められること

教職員に求められるのは、精神疾患を診断することではありません。普段との違いや本人の困りごとに気づき、必要に応じて保護者や専門機関と情報を共有することです。


学校では、担任や養護教諭、スクールカウンセラー、管理職などが、学校での普段の様子を把握しています。医療機関は診断や治療に関する情報を持ち、家庭は日常生活での様子を知っています。


それぞれが持つ情報を共有し、「どの場面で困りやすいのか」「不調のサインは何か」「調子を崩したときに誰がどう対応するのか」を具体的に整理することで、本人の状態への理解が深まり、学校生活の中で実行できる支援を検討しやすくなります。


また、支援がうまくいかないときには、対応方法だけでなく、その前提となっている見立てが適切だったかを振り返ることも大切です。


eye-level view of a school nurse's office with medical supplies


学校・家庭・医療機関が連携するときのポイント


子どもの精神疾患に対応するには、学校・家庭・医療機関がそれぞれの情報を持ち寄り、学校で必要な支援を具体化することが大切です。


ただし、すべての情報を共有する必要はありません。本人の意向やプライバシーに配慮し、支援に必要な情報と共有範囲を整理します。


1.学校生活の中で何に困っているのかを整理する

連携の出発点は、診断名ではなく、子どもが学校生活のどの場面で困っているのかを把握することです。


例えば、教室に入りにくい、人前での発表に不安を感じる、朝は体調が整いにくい、集中力が続かないなど、困難の現れ方は一人ひとり異なります。一つの行動にも、不安、対人関係、学習上の困難、体調など、さまざまな背景が考えられます。


本人や保護者、担任、養護教諭、スクールカウンセラーなどの情報を持ち寄り、支援が必要な場面を整理します。


ポイント③:原因を一つに決めつけず、複数の可能性を考える


2.医療機関からの情報を学校で実行できる形にする

医療機関から「無理をさせないように」「ストレスを減らすように」と伝えられても、それだけでは学校での対応を決めにくいことがあります。どのような場面が負担になるのか、どの程度なら参加できるのか、不調が強くなったときはどうするのかを確認します。


例えば、人前での発表が難しい場合には、少人数で行う、録音したものを提出する、参加方法を選べるようにするなどの対応が考えられます。医療機関から得た情報を参考にしながら、本人や保護者と相談し、学校で実行可能な支援へ落とし込みます。


ポイント④:「やる・やらない」の二択ではなく、本人が参加できる方法や程度を考える


参加方法に選択肢を設けることで、教育の機会を確保しながら、本人の負担にも配慮しやすくなります。


3.不調時の対応と連絡の基準を決めておく

調子が崩れたときに、誰が対応し、どの段階で保護者へ連絡するのかを決めておきます。教室で過ごせないときの居場所、相談できる教職員、早退を検討する目安、医療機関へ相談する状態などを整理します。


また、「困ったときは誰に相談するのか」「どのような状態になったら、どうするのか」を本人にも伝えておくと、見通しを持って学校で過ごしやすくなります。


4.関係者の役割と連絡窓口を明確にする

本人の相談窓口、保護者との連絡担当、校内の情報を取りまとめる担当を明確にします。医療機関との連携についても、保護者を通じて情報を共有するのか、本人や保護者の同意を得て学校から直接連絡するのかを確認します。


情報共有の目的や範囲、手順が曖昧なまま進めると、本人や保護者との信頼関係を損なう可能性があります。必要に応じて管理職や専門職とも相談します。


5.子ども本人の意向を確認する

どのような支援を受けたいのか、誰に相談したいのか、診断や体調について誰まで伝えてよいのかは、本人によって異なります。大人だけで支援内容を決めると、本人が監視されているように感じたり、配慮を負担に感じたりすることもあります。年齢や発達段階に応じた言葉で説明し、本人の意向を確認しながら支援を考えます。


ポイント⑤:支援を一方的に進めず、本人の反応を見ながら柔軟に調整する


提案した支援が本人に合わない場合には、無理に続けず、方法やタイミングを見直すことも必要です。


6.支援内容を定期的に見直す

子どもの状態は、治療の経過や学年、行事、人間関係などによって変化します。一度決めた対応を続けるのではなく、本人の様子や負担を確認しながら見直します。状態が変化したときに誰へ伝えるのかも決めておくとよいでしょう。回復に応じて参加の幅を広げることも含め、その時々の状態に合った支援へ調整します。


ポイント⑥:支援の効果と本人の負担を、定期的に振り返る


支援を続けた結果、何が変わったのか、本人にとって負担になっていないかを確認し、必要に応じて対応を修正します。






子どもの支援を学校全体で支えるために


精神疾患を抱える子どもへの対応を、一人の担任や養護教諭だけに任せることはできません。日々の見守りや授業上の配慮、保護者との連絡などを特定の教職員だけが抱え込まないよう、校内で相談できる体制を整えておく必要があります。


また、支援が必要になってから体制を考えるだけでなく、すべての子どもが「困ったときには相談してよい」と思える環境をつくることも大切です。心の健康について学ぶ機会を設け、校内外の相談先を分かりやすく伝えることが、早期の相談や不調の予防につながります。


まとめ


子どもの精神疾患に対応する際、学校だけで問題を抱えたり、医療機関から示された情報をそのまま受け取ったりするだけでは、具体的な支援につながらないことがあります。


大切なのは、診断名だけに注目するのではなく、子どもが学校生活のどの場面で困っているのかを把握し、家庭・学校・医療機関がそれぞれの情報を持ち寄ることです。

そのうえで、学校でできること、医療機関に確認すること、家庭と共有することを整理し、本人の意向を確認しながら支援を組み立てていきます。


連携の目的は、情報を共有すること自体ではありません。子どもが安心して学校生活を送り、自分に合った形で学びや活動に参加できる環境を整えることです。


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参考資料

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