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教育現場で活かすメンタルヘルス・リテラシー

9月19日
読了時間: 5分

――いつも提出していた課題が出なくなった。授業中、集中しづらそうにしている――


 学校で子どもたちと関わる中で「いつもと違う」と感じることがあります。そんなとき、心の健康についての知識があると関わり方を考える手がかりになります。


 和-conneでは「教育現場のためのメンタルヘルス実践研修」として、学校での支援に関する6つの研修を開催しました(アーカイブ配信中)。ひとつ目の研修が以下のものです。


「メンタルヘルス・リテラシー こころの健康の基礎教養」


 国際医療福祉大学の小川光江先生をお迎えし、思春期にみられる精神疾患や、普段との違いに気づくことの大切さをお話しいただきました。今回は、そのお話を入口に、メンタルヘルス・リテラシーを学校での日々の関わりにどう活かせるか、考えてみたいと思います。



研修カタログ:メンタルヘルス・リテラシー こころの健康の基礎教養



1.心の健康を知り必要なときに行動する

 メンタルヘルス・リテラシー(MHL)とは、心の健康について理解し、その知識を予防や対処、相談に生かす力のことです。病気の名前や症状を覚えるだけでなく、日々の生活の中で、次のような行動につなげることが大切になります。


  • 心の健康を保つための方法を知り、生活に取り入れる。

  • 自分や周りの人の変化に気づき、不調の可能性を考える。

  • 心の病気への誤解や偏見を見直し、相手の状況に応じて関わる。

  • 相談先や支援の受け方を知り、必要なときに助けを求める。


 学校では子どもの様子を理解して支援につなぐときにも、先生自身の心の健康を守るときにも、この力が役立ちます。



2.知識があると子どもの見え方が変わる

 心の不調は気分の落ち込みだけでなく、睡眠や食欲の変化、集中のしづらさなどにも表れることがあります。研修でも取り上げられた「普段との違いに気づく」という視点は、学校で子どもを理解するうえで大切な手がかりです。


 たとえば、これまで欠かさず課題を提出していた生徒が、急に出さなくなったとします。「やる気がなくなった」と受け止めると、注意や励ましによって提出を促す対応が中心になるかもしれません。一方で、「何か困っていることがあるのではないか」と考えると確かめたいことが変わります。


――いつ頃から変化したのか。課題に取りかかれないのか、途中で進まなくなるのか。眠れているか、体調はどうか――


 本人の話を聴きながら、背景に目を向けることができます。課題が出ないという情報だけで、心の病気があるとは判断できません。知識を手がかりにいくつかの可能性を考え、本人に何が起きているのかを確かめる。そのためにメンタルヘルス・リテラシーを活かしていきたいところです。



3.MHLを日々の接し方に活かす

 ――心の病気は本人の弱さが原因。その気になれば乗り越えられる――

 

 こうした捉え方は、相手への接し方にも影響します。心の不調には、生活環境を含めたさまざまな要因が関わり、専門的な治療や周囲の支援が必要になる場合があります。


 頭では理解していても、身近な子どもに対しては、「この子なら頑張れるはず」「もう少し努力すればできるはず」と考えてしまうことがあります。励ましたいという気持ちから、本人のつらさを十分に確かめないまま、頑張ることを求めてしまうかもしれません。


 そんなとき自分の受け止め方を一度振り返ることも、知識を日常に活かす実践のひとつです。努力の問題と決めつけていないか。本人が困っていることを聴けているか。そう考えることで、声のかけ方や支援の方向が変わることがあります。





4.「相談先を知る」から「相談できる関係づくり」へ

 相談先を知っていても、実際に相談するまでには壁があります。「悩みを話したら笑われるかもしれない」「周りに迷惑をかけたくない」と感じて、打ち明けられないこともあります。


 だからこそ、子どものうちから「困ったときには相談してよい」と学び、安心して話せる経験を重ねることが大切です。心理授業やSOSの出し方を学ぶ機会に加え、普段の関わりの中で、相談を受け止めてもらえると感じられることも欠かせません。


――話を遮らずに聴く。すぐに助言しようとせず、まずは話してくれたことを受け止める。そのうえで、どうすればよいかを一緒に考える――


 こうした接し方は、大人が実践するとともに、子どもたちにも伝えていきたいものです。友達の相談を一人で抱えず、必要なときには信頼できる大人につないでよいことも、あわせて伝えたいところです。


 先生自身が判断に迷ったとき、同僚や専門職へ相談することも大事になります。支える側も「自分一人で何とかしなければ」と抱え込まず、周囲の力を借りながら対応を考えていくことが大切です。



5.MHLを支える「相談」と「連携」

 小川先生らが養護教諭201名の回答を分析した研究では、メンタルヘルス・リテラシーの高さは、自殺予防教育や書籍での情報収集に加え、職場内の相談相手や精神科医療機関との連携とも関連していました。


 この結果だけで、「相談相手がいるからリテラシーが高くなった」とは言い切れません。ただし、「知識を学ぶこと」と「相談や連携ができる環境を整えること」をあわせて考える手がかりになります。


 学校でも、気になる様子を同僚と共有したり、スクールカウンセラーに相談したりする機会を通じて、自分だけでは気づかなかった見方や対応を学ぶことがあります。研修で得た知識を日々の相談に活かし、そこで考えたことを次の関わりにつなげていく。そうした積み重ねを大切にしていきたいところです。


 次回は、子どもの様子や背景を整理し、必要な支援を考える「見立て」について取り上げます。




 「教育現場のためのメンタルヘルス実践研修」は、現在アーカイブ配信中です。研修1では、心の健康の基礎知識から、学校での見立てと支援までを扱いました。日々の関わりを考える土台を学びたい方は、研修のご案内もご覧ください。




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