top of page

リフレクティング・プロセスとオープンダイアローグから考える認知行動療法への統合

10 分前
読了時間: 21分

 2026年9月に開催された「日本認知・行動療法学会第52回大会」にてポスター発表をしてきました。学会発表は4年ぶりで、今回はいろんな方とお話する機会がありました。やっぱり発表すると交流する機会が増えますね。発表テーマは家族療法から発展した「リフレクティング・プロセス(Reflecting Process/Processes:RP)」という技法です。


 発表後に「オープンダイアローグ(Open Dialogue:OD)とRPの関連性」について質問を受けました。発表時は受けなかった質問でしたが、これについては私なりに考えていることがあります。せっかくなので、今回の記事ではこの質問にお答えする形で、RPについてまとめたいと思います。


 記事構成としては、RPとODを紹介しながら、認知行動療法にRPを組み込む可能性を考えたいと思います。家族療法については不勉強な部分もありますので、拙い紹介になることをご了承ください。


 それでは内容に入っていきたいと思います!



こちらが第52回のチラシ。会場は池袋のサンシャインシティでした。

0.はじめに


家族「心配だから声をかけているのに、子どもは黙ってしまう」 本人「何度も聞かれると、ますます答えたくなくなる」

 家族面接では、こうしたすれ違いが見えることがあります。家庭内でも繰り返しみられるような場面で、そこから話が進みにくくなるような特徴があります。


 そんなとき、本人・家族には少し聞く側に回ってもらい、2人の支援者がいまの話をどう受け取ったかを語り合う方法があります。これを「リフレクティング」と呼びます。本人・家族はその会話を聞いて「気になったこと」や違和感などをあらためて自分の言葉で語っていきます。


 この実践を中心に発展させてきたのが、リフレクティング・プロセス(RP)というものです。またオープンダイアローグ(OD)という別の支援方法においても、同様のリフレクティングという時間が大切にされています。現在の両者は、面接でのやり取りだけを見ると、区別しにくいほど重なる部分があります。


 今回注目したいのは、「リフレクティングとは何を語るものなのか、何を根拠にリフレクティングへ切り替えるのか」という点です。主訴や問題の展開を丁寧に捉えるCBTのアセスメントは、この判断を具体的にする手がかりになるのではないかと考えています。


 まずはRPとはどういった技法なのか、簡単にご紹介したいと思います。



1.リフレクティング・プロセス(RP)とは


 RPはノルウェーの精神科医トム・アンデルセンらが家族療法の実践から発展させた方法です。1987年の論文では「リフレクティング・チーム(Reflecting Team)」として紹介されています[1]。


 初期の代表的な形式では、①本人・家族と面接者の会話を、別室の支援者チームが一方向の鏡越しに聞いていました。一通り話したあと、②今度は支援者チームの話し合いを本人・家族が聞きます。③そのあと「どのように聞こえましたか」と本人・家族に尋ねます。面接を振り返る支援者の会話そのものを家族に見せることに治療的な意義を見出した実践方法です。


 この流れを整理すると、「①本人・家族との対話」「②支援者同士のリフレクティング」「③本人・家族との再対話」となります。ここでいう再対話とは「支援者の会話を聞いて感じたことを再び本人・家族の言葉で話す時間」のことです。下図は学会発表で説明のために作ったRPの流れを示したものになります。





 リフレクションの時間では、たとえば支援者Aが「お母さんは心配しておられるように聞こえました」と語り、支援者Bが「私は子どもさんが答えを急がされるつらさも気になりました」と話したりします。リフレクションの特徴は、こうした会話に対して、本人・家族はすぐに返答せずに済むため、それぞれの会話を聞きながら考えることができます。


 リフレクションで大切なのは、支援者の見解を「正解」として受け入れてもらうことではありません。複数の見方に触れ、合うものも合わないものも含めて、自分たちの経験を考え直せることに最大の特徴があります。支援者が何を語ったかだけでなく、本人・家族がどう受け取ったかまでがRPの重要な部分になります。



【初期のチーム形式から柔軟なプロセスへ】


 その後のアンデルセンらの実践は、別室の支援チームが決まった区切りで話す形式にとどまらず、同じ対話場面の中に、より柔軟にリフレクティングを織り込む方向へ広がりました[2]。形式としての「チーム」よりも、話すことと聴くことを行き来する「プロセス」に目が向けられるようになったと言えます。


 本記事では、こうした柔軟な発展を含む実践を「現代RP」と呼びます。実践者研究の中でも、RPは「技法(technique)」としての側面だけでなく、「人の話をどう聴き、どう関わるか」という姿勢(philosophy)として捉えられています[3]。柔軟な実践が強調された結果、初学者にとっては「いつ切り替えるのか」という判断が見えにくくなることもあるように思います。とくにリフレクティングのタイミングは決まっていないため、切り替えの判断については臨床経験が必要になります。



表:初期RPと現代RPとの比較


初期RP

現代RP

リフレクション

明確な技法

対話を支える実践の一つ

実施形式

比較的明確

柔軟・即興的

切り替えタイミング

区切りを作って実施しやすい

対話の流れに応じて変化

誰が話すか

リフレクティング・チーム

参加者・専門家を含め多様

目的

別の視点を導入する

対話・多声性を広げる

手順化

しやすい

しにくい



2.オープンダイアローグ(OD)とは


 ODはフィンランドで発展した「本人とその周囲の人たちとの対話を重視する支援」です。本人、家族、必要に応じて友人や関係する支援者などが集まり、いま起きていることをそれぞれの立場から話すのが特徴です。


 ここで大切にされるのが、「①多声性(polyphony)」と「②不確実性への耐性(tolerance of uncertainty)」です。


 「①多声性」とは、本人にも家族にも支援者にも異なる感じ方や考えがあり、それらを一つにまとめきらずに聞くことです。「②不確実性への耐性」とは、まだ分からないことを急いで一つの説明や結論にまとめないことです[2]。


 ODでもリフレクティングの時間があり、支援者同士が本人・家族の前で、感じたことや考えたことを語り合います。本人・家族は支援者の話を受け入れるだけでなく、異なる意見を主張する余地がある点も、RPと共通しています。


 一方で、ODは会話の技法だけを意味するものではありません。必要なときに速やかに支援を始めることや、本人の生活を支える人々との協力、継続した支援体制も含むアプローチです[2]。RPとODでは捉えている支援の範囲が異なり、ODの方がより広い範囲を捉えているといえます。



3.現代RPとODの共通点からCBTへの統合を考える


 現代RPとODはどちらも対話がさらに展開していくことを重視しており、多くの共通点があります。以下に共通点をまとめてみました。



表:現代RPとODの共通点

比較する項目

現代RPとODに共通する考え方・進め方

本人・家族との関わり方

支援者が一方的に解釈を伝えるのではなく、本人・家族の言葉を聞きながら一緒に考える。

問題についての理解

支援者の理解を唯一の正解にせず、異なる受け止め方も検討できる余地を残す。

支援者の伝え方

支援者の考えや感じたことについて、本人・家族が聞ける場で伝えて、対話を展開する材料とする。

リフレクティングの目的

本人・家族が別の見方に触れることで、自分たちの体験を捉え直したり、新たな語りが生まれたりする機会をつくる。

リフレクティング後

本人・家族に会話を戻し、何が心に残ったか、どう受け取ったかを尋ねる。支援者への同意を求める場にはしない。

リフレクティングに切り替えるタイミング

タイミングを限定せず、会話の進み方に応じて柔軟に切り替える。



 リフレクションの場面を切り取っても「こっちがRPでこっちはOD」と判断するのは難しいでしょうし、対話技法としてほとんど区別がつかないかもしれません。ただし、前述のように支援体制まで同じというわけではありません。


 厳密にはRPとODどちらの立場かによって、「リフレクション」への切り替えタイミングが違う可能性がありそうなのですが、適切な切り替えタイミングそのものが、まだそこまで研究されていません。



表:現代RPとODの特徴

比較する項目

現代RP

OD

支援の範囲

話す・聴く・振り返るという対話の過程と、それを支える関わり方に焦点を当てる。

対話の実践に加え、本人・家族・関係者を支えるサービスの組織や継続性も含む。

リフレクションの組み立て方

話し手と聞き手の役割を切り替えることで、本人・家族の話を別の立場から聞く機会をつくる。

ネットワークとの対話の中に、支援者同士のリフレクティングを組み込む。RPの形式も用いる。

多声性の位置づけ

複数の見方に触れることを重視する。

異なる声が共存することを、明示的な基本原則として位置づける。

不確実性への耐性

問題の理解を固定せず、対話によって捉え直す姿勢を保つ。

「不確実性への耐性」を基本原則とし、危機の理解や支援方針を早急に固定しない。



 さて、今回はここからさらに、CBTに「リフレクション」を取り入れることについて考えたいと思います。CBTへの統合を考えたとき、RPを手がかりにすることで「対話からリフレクティングへ切り替え、再対話へ戻る」という構造を一つの介入として検討しやすくなります。対話的な姿勢を大切にしながらも、リフレクティングを面接のどのタイミングに配置し、何を扱うかを考えられます。


 CBTでは、問題場面やそれに対する思考・感情・行動・結果事象を調べて、問題が維持される仕組みを本人・家族と一緒に考えます。この理解の過程が「アセスメント」であり、情報をつなげた暫定的な説明が「ケースフォーミュレーション」です[7]。


 今回の統合案で中心に置くのは、リフレクティングへ切り替えるタイミングです。CBTのアセスメントを通して、具体的な困りごとと、それが繰り返される流れが見えてきた段階を、切り替えを検討する候補とします。ただし、その段階に達しても、本人・家族の語りがまだ展開しているなら、対話を続けます。何が語られ、何を一緒に振り返れる段階にあるかを確かめることで、切り替えの判断を具体的に説明できるのではないかと考えます。



4.リフレクティングへの切り替えタイミング


 リフレクティングについては、支援者の語りや対話の姿勢などを検討した研究があります。たとえば、Schriverらの研究は、ODの面接終盤に行われた約10分間のリフレクティングを分析して、支援者が自分の理解をどのように語るかを扱っています[4]。Sidisらは、12名の実践者インタビューから、実践の捉え方や関わり方を検討しています[3]。


 こうした対話内容やプロセスの研究がある一方、どの局面でリフレクティングを始めると、その後の展開がどう変わるかを直接比較した研究は限定的です。特定の切り替え方の効果が、十分に確かめられているわけではないと言えます。



  • 発言を前後の文脈の中で捉える分析方法


 この問いを考える手がかりになるのが、対話系列分析(Dialogical Sequence Analysis:DSA)です。DSAは「発言内容」だけでなく、「誰に向けて」「どのような立場から語られたのか」について、やり取りの流れの中で検討する分析方法です。


 Leimanは、困難に巻き込まれている状態から、その困難を支援者と一緒に眺められる状態をつくるプロセスを論じています。また介入が本人の取り組める範囲に合っていることも重視しています[5]。このような考え方からは、支援者が何を語るのかだけでなく、「本人が何を語り、何を振り返れる状態にあるか」を捉える必要性が見えてきます。



  • 重要な語りにどう応答したかがその後の展開に関わる


 Seikkula(2002)は、精神病性の危機を経験した人たちのうち、転帰の異なる事例について、ODにおける対話を分析しています。


 「①良好転帰例」では、父親と息子の取っ組み合いが語られた際、支援者チームは状況を確認したうえで、本人・家族の前でリフレクティングを行いました。支援者同士は葛藤の深刻さを受け止めながら、その出来事を息子の成長や親への反抗という側面からも捉え直せるのではないかと話し合い、本人もその会話に発言を重ねていました。


 一方、「②不良転帰例」では、本人が自分の暴力や考えについて振り返り始めたものの、支援者はその発言を取り上げず、受診に至る経過など事実確認を続けていました[6]。


 この研究はリフレクティングの有無による効果検証をしたものではなく、対話の違いが転帰に繋がったと結論づけることはできません。しかしながら、このような対比は、重要な経験が語られたとき、事実確認するだけでなく、本人の言葉を受け止め、その意味を一緒に考えるプロセスをつくることの重要性を示唆しています。


 これらを踏まえて提案したいのは、「主訴や悪循環が具体的に語られたときに、リフレクティングに切り替えて、本人・家族が別の意味や捉え方を検討できる局面をつくることが、治療的に有益ではないか」という仮説です。



5.困りごとが具体的に見えてきた瞬間を捉える


 現代RPをCBTに統合するうえでは、「主訴や問題が一通り見えてきたこと」をリフレクティングへ切り替えるタイミングとして考えます。「主訴とは何か」という話にもなるわけですが、ここでは「本人や家族が相談に持ち込んだ主な困りごと」とします。さらに、ここでいう「一通り」は、面接全体の話を聞き終えることではありません。例えば50分の面接でも、開始から15分ほどで一つの具体的な問題場面が見えてくれば、その段階でリフレクティングを検討します。今回想定しているのは、面接の最後に一度だけ振り返るような形式ではなく、対話とリフレクティング、再対話を必要に応じて行き来する進め方です。


 ただし、ある段階に達したからといって、すぐにリフレクティングへ切り替えた方がよいわけではありません。本人・家族との対話をもう少し続ける必要があるかについて、以下のような問いかけをします。これは今の対話で起きていることを確かめ、切り替えをいったん保留するための問いです。


表:切り替えをいったん保留する問い

確かめたいこと

切り替えをいったん保留する問い

困りごとの語られ方

本人・家族は、重要な経験や困りごとをまだ語っている途中ではないか。支援者の理解よりも、本人・家族が話したいことを優先する必要はないか。

具体的な問題場面

「何が起き、どう受け止め、その結果どうなったか」について、まだ本人・家族に確かめたいことはないか。

問題を維持するやり取り

問題を維持するやり取りについて、確かめたいことはないか。一方の説明だけで、その流れを決めつけていないか。

対話の中で生じている変化

新しい見方や感情表現が、今の対話の中で生まれているか。その展開をもう少し一緒にたどる必要はないか。

沈黙の意味

本人・家族は考えをまとめたり、言葉を探したりしていないか。支援者が先に話し始めず、待つ必要はないか。

聞くことへの意向

支援者チームの会話への切り替えについて本人・家族はどう感じているか。まだ話し続けたいという気持ちはないか。

切り替え後に話し直す時間

リフレクティング後に、本人・家族が感じたことや考えたことを話せる時間はあるか。切り替えによって、対話を途中で終えることにならないか。


図:リフレクティングへの切り替え判断



 これらの問いかけを通して、必要に応じて切り替えを保留します。リフレクティングへの切り替えは、あらかじめ用意した目的に当てはめるのではなく、こうした問いを検討する中で整理されるものと考えます。


 たとえば、「親の確認が増えるほど子どもは答えにくくなり、子どもの応答が少ないほど親は確認したくなる」という悪循環が見えたとします。その段階でも、子どもが初めてつらい経験を親の前で話し始めたのであれば、その対話を続ける方がよいこともあります。沈黙の場合も、行き詰まりを意味しているだけでなく、思考停滞によって考えをまとめるのに時間がかかっているのかもしれません。


 現代RPやODでは、本人・家族の発言や沈黙、支援者自身の反応などを手がかりにリフレクティングの切り替えを柔軟に判断しますが、今回の提案は「いま問題のどの部分が扱われ、どんな循環をリフレクションできる段階にきたか」という判断基準をより具体的に示したいと思います。リフレクションへの切り替え判断を主訴や問題の展開に結びつけて説明できるようにすることが狙いです。「対話の流れを見て切り替えた」という説明をもう一歩、具体的にすることは、臨床実践を研鑽するうえで重要と考えます。




6.見立ての共有と再対話のポイント


 CBTにおいても、見立ては本人と協働して検討するものです[7]。ただし、支援者から見立てを説明されると、本人・家族が同意・同調しなければならない圧力を感じることもあります。CBTにRPを取り入れる意義の一つは、見立てを共有する際に、受け取る側の選択肢を確保しやすくなることにあります。


 たとえば、リフレクション場面においては、支援者チームの意見が必ずしも一つにまとまらなくても構いません。本人・家族は両方の意見を聞いたうえで、「こっちの説明の方が合うけど、こっちはちょっと違うかな」と考える余地が生まれます。大切なのは、まだよく分かっていない部分も含めて語り合うことです。専門用語で問題を分析し尽くしたように話したり、同意へ誘導するために意見の違いを演出したりすることは避けます。


 学会発表の事例では、リフレクション場面が「仕込み」と思えるぐらいの流れだったため、「支援者同士で打ち合わせしたんですか?」と質問されましたが、全然そんなことはなく、自然に出てきた意見で面接を組み立てています。


 再対話では、リフレクション場面の話を聞いて「どう感じたか」「どこが印象に残ったか」「どんなことを考えたか」などについて聞きます。このとき、支援者の考えを受け取らない自由が守られていることが重要です。



7.模擬事例で見る切り替えの判断とその後の展開


 以下は、CBTとRPの統合案を説明するための架空の事例です。効果を示す実際の事例ではありませんのでご注意ください。朝の準備をめぐる親子のすれ違いを二人の支援者がリフレクションする場面を想定します。架空事例ですが、よくある困りごとです。



  • 最初の切り替えは問題の循環が具体的に見えたとき


 親は「何度言っても朝の準備を始めてくれません」と話し、子どもは「やろうと思っているのに次々と言われるから嫌になる」と話していたとします。具体的な流れを確認して、最初に保護者が声をかけ、返事がないため再び確認し、子どもが黙ったり強く言い返したりする、というやり取りが繰り返されていることが分かってきました。そして面接内でも、同じような循環が観察されたとします。このとき、睡眠や体調、学校での出来事、準備の難しさなども確認し、朝の困りごとすべてを親子関係だけで説明しないようにします。



図:悪循環の例



 リフレクションに切り替えるタイミングとしては、本人・家族の困りごとが具体化し、同じ説明を繰り返すような状態になっている瞬間です。本人・家族がリフレクションを聞いて、話を振り返る意味があると考えます。


 支援者Aは、「声をかける側も答える側も、お互い困っていることが見えてきました。いまのお話を私たち二人がどう聴いたか、少し話してもよいですか」と提案し、了承が得られれば、リフレクティングに移ります。


支援者A「お母さんとしては、遅れたらどうしようと心配されているので、『何も言わずに待つ』ことが難しいのかなと思いました」

支援者B「子どもの目線から見ると、何も考えていないわけではないのに、お母さんからの確認が続くと、やろうと思っている気持ちを伝えにくくなるのかも」

支援者A「そうかもしれませんね。子どもさんが黙っているときに何が起こっているのか、本当は言いたいことがあるのかもしれないですね」



  • 再対話で見立てを修正する


 本人・家族との対話に戻って感想を聞いていくと、親は「黙っていると動くつもりなのか分からなくて」と話し、子どもは「嫌いだから黙っているわけじゃない。何をやるか考えてることもある。どうするって何回も言われると困る」と話します。


 ここで新しいアセスメントの材料が得られます。親は「黙っているのは親への反発」と受け取りやすいが、準備時間が必要なことや、その見通しが親に伝わっていないことが、すれ違いに関係していると考えることができます。すぐに解決策を提示せずに、「どのくらい時間があると考えやすいか」「どんな返事なら親は待てそうか」などを聞いていきます。


 「問題発生時のフロー」でも触れましたが、こうしてアセスメント/見立てを適宜修正することが、介入していくうえでは必要になります。



図:再対話で見立てを修正



  • 二度目の切り替えは新しい理解と残る心配が出そろったとき


 話を進めると、親から「約束しても動かなかったら」という心配も出てきたとします。子どもも「できない日もあるのに、絶対の約束はできない」と話します。


 ここで2回目のリフレクションへの切り替えを検討します。理由としては、修正された見通しを共有する意義があることと、「約束できる/できない」という難しさが具体的に現れたことです。話が進んでいる途中なら対話を続ける選択もありますが、このタイミングでリフレクションした場合として、続きを見ていきたいと思います。


支援者A「お母さんとしては、いつまで待てば良いのか、子どもと見通しを一緒に持てることが大切なのかも」

支援者B「うまくいかない日にどうするかも決まっていると、子どもも約束しやすくなるのかなと思いました」


 再対話にて、子どもは「できないときはできないと言ってもいいなら約束できる」と話します。親も「ただ待つよりはその方がよい」と応えます。ここから家庭内ルールを具体的に考えていきます。



  • 家庭内ルールを小さく試し日常の変化を確かめる


本人・家族は「朝の確認を減らす」ことを共通目標にして、次のルールを一週間試すことにします。


・子どもは朝食後に準備する時刻を伝える。決めにくい日は親と一緒に考える。

・親はその時刻までは確認をせず、予定時刻を過ぎたら予定を確認する。

・間に合わないときは、子どもから「何分ほしい」「手伝ってほしい」と伝える。


 大事なことは、上記のルールを厳密に守らせることではなく、こうしたルールによって二人のやり取りに変化が生じることです。


 一週間の記録も負担の少ない形にします。確認の回数、開始時刻や変更を伝えられたか、親子それぞれの負担感を0-10でどのくらいと感じたかなどを簡単に残します。行動変容だけでなく、やり取りが楽になったかを確認できると良いと思います。


 面接内での納得感と生活内での行動変容を繋ぎ合わせて、その結果を一緒に確かめていくことが、CBTへの統合では欠かせません。



図:面接から日常生活へのつなぎ



8.切り替えの判断をCBTのアセスメントに結びつける


 リフレクティングを検討するとき、「どんな内容を語ることが効果的か」に意識が向きやすいですが、リフレクティング前の文脈から切り離して考えることには限界があります。同じような内容であっても、本人・家族がまだ十分に話していないときと、困りごとを具体的に話したあとでは、受け取られ方が異なると考えられます。


 今回のCBTへの統合案では、リフレクティングへ切り替えるタイミングの判断を中心に置きました。CBTのアセスメントを通して、「問題が起こったとき、本人・家族がどう受け止め、どのように行動し、その結果どうなったか」を確かめて、困りごとや悪循環が繰り返される流れが見えてきた段階を「リフレクティングへの切り替えタイミング」として検討します。


 ただし、問題の流れが見えてきたからといって、すぐに切り替えるわけではありません。本人・家族が大切な経験を語っている途中であったり、新しい見方が生まれ始めていたりするなら、その対話を続けることも大切です。「問題について何が分かってきたか」と「本人・家族との対話で何が起きているか」を確かめながら切り替えを判断します。


 模擬事例でも、リフレクション場面のような発言を面接の最初にしていたら、本人・家族にはしっくりこなかったかもしれません。切り替える前の対話が、リフレクティングで何を語るかを形づくります。そして、その会話を本人・家族がどう受け取ったかを再対話で聞くことで、支援者の見立ても修正されていきます。



図:リフレクティングへの切り替え判断まとめ



 現代RPとODには、対話の進め方に多くの共通点があるわけですが、今回は両者の違いを明確に区切るものではなく、共通するリフレクティングの実践に、CBTのアセスメントの視点を加えることで、「なぜ、この段階で切り替えを検討したのか」を、具体的な困りごとや問題の維持要因に結びつけて説明しようとするものです。


 この判断を振り返る際には、切り替え直前の対話から、支援者が語った内容、本人・家族の受け止め、その後の日常生活での変化までを連続的なプロセスとして見ることが大切かなと思います。


―いま、困りごとのどこまでが語られ、どこまで振り返れる段階にあるか―
 

 この問いを持つことが、本人・家族との開かれた対話を大切にしながら、リフレクティングへの切り替えを丁寧に判断する手がかりになるのではないかと考えます。



9.おわりに


 ちょっとまとめるつもりが、だいぶ長くなってしまいました。家族を含めた相互作用にアプローチするときに、通常の家族面接にはないメリットが、リフレクティングにはあると思います。複数の支援者がいたり、OJTができたりするような環境では、リフレクティングの構造を準備することもやりやすいかなと思います。ただし、実践していての感想としては、うまく使いこなすのは、案外むつかしいかもしれません。


 いつリフレクティングをするのか、本当にこのタイミング次第で、かなり流れが変わってしまうように感じます。難しさはありますが、しっかり流れをつかむことができれば、その後のケースの展開が進みやすいという印象があります。


 CBTの実践の中で、家族面接をされている方も結構いるかと思いますが、少し違ったアプローチが必要と感じる場合には、リフレクティングを取り入れてみてはどうでしょうか。


 ではでは。



参考文献

  • [1]Andersen, T. (1987). The reflecting team: Dialogue and meta-dialogue in clinical work. Family Process, 26(4), 415–428.

  • [2]Olson, M., Seikkula, J., & Ziedonis, D. (2014). The key elements of dialogic practice in Open Dialogue: Fidelity criteria (Version 1.1). University of Massachusetts Medical School.

  • [3]Sidis, A. E., Moore, A. R., Pickard, J., & Deane, F. P. (2022). “Always opening and never closing”: How dialogical therapists understand and create reflective conversations in network meetings. Frontiers in Psychology, 13, 992785.

  • [4]Schriver, K. N., Buus, N., & Rossen, C. B. (2019). Reflective practices in Open Dialogue meetings: Reporting and inferential ‘My side tellings’. Journal of Pragmatics, 146, 19–31.

  • [5]Leiman, M. (2012). Dialogical sequence analysis in studying psychotherapeutic discourse. International Journal for Dialogical Science, 6(1), 123–147.

  • [6]Seikkula, J. (2002). Open dialogues with good and poor outcomes for psychotic crises: Examples from families with violence. Journal of Marital and Family Therapy, 28(3), 263–274.

  • [7]Beck Institute for Cognitive Behavior Therapy. (n.d.). Understanding CBT.

最新記事

すべて表示
強迫症のCBTにおける「適切なギャップ」をどう考えるか

最近、強迫症のCBTについて考える機会があったので、せっかくなので記事にしてみました。専門的な内容かつ長いですが、興味のある方はどうぞ。 強迫症のCBTにおける「適切なギャップ」をどう考えるか ~期待違反の操作から反応・主体性・生活目標を支える実践へ~  強迫症に対するエクスポージャーと反応妨害(ERP)では、予期していた結果と実際の結果との不一致、すなわち「期待違反(Expectancy Vio

 
 

HOME > ブログ

和-conneロゴ
bottom of page